火垂るの墓を子どもに見せるべきか──Netflixと地上波でよみがえる戦争の記憶
2025年7月15日に配信開始予定のスタジオジブリの名作『火垂るの墓』は、日本国内のNetflixで初めて視聴可能になります。
また、2025年8月15日には日本テレビ系列の「金曜ロードショー」で地上波放送も予定されており、終戦80年という節目の夏に、再び多くの家庭でこの作品と向き合う機会が訪れようとしています。
なお、前回地上波で放送されたのは2018年4月13日──高畑勲監督の追悼特集でした。それ以来7年ぶりの放送となり、待ち望んでいた視聴者も多いのではないでしょうか。
地上波での放送も近年は減ってきた印象があり、再びこの作品に触れる機会が少なくなっていたなかで、“家族でいつでも観られる日常”に戻ってくることには、大きな意味があると感じます。
※ Netflix配信について:Netflix公式特集記事『火垂るの墓』配信開始に寄せて
『火垂るの墓』を子どもに見せるべきか──親として感じた“今の幸せ”
親になって見えたもの
ある日、何気なく見ていたYouTubeで『火垂るの墓』のリアクション動画が流れてきました。
涙をこらえる外国人や、静かに見入る表情に、自分自身も胸が締めつけられました。
「子どもにこの映画を見せるべきか?」
その問いは、親になった今だからこそ真剣に考えたくなるものです。
この映画は、ただ悲しいだけの物語ではありません。
日常のありがたさや、人と人とのつながりの尊さを、静かに、でも強く伝えてくれるのです。
兄妹の絆に込められた実話──半自伝の原作
『火垂るの墓』の原作は、作家・野坂昭如さんが自身の体験をもとに描いた短編小説です。
実際に妹を戦争で失った彼が、「ごめん」と伝えたくて書いた物語。
その思いを、高畑勲監督がアニメとして丁寧に描いたのが、今の私たちが観るジブリ版『火垂るの墓』です。
“誰かが悪い”というより、”こんな時代があった”ということを、静かに語りかけてきます。
“古くなった”と思っていた作品が、再び心を動かす
SNSでは、「昔観てトラウマだったけど、今観たら泣き方が違った」「子どもに見せる前に、親が泣いた」などの声が広がっています。
Netflixでの配信は、そんな“再視聴のきっかけ”にもなっています。
『火垂るの墓』は、決して“古くなった作品”ではありません。
それは、今を生きる私たちにこそ刺さる「記憶と感情の記録」なのです。
家族で観るための視聴ガイド
『火垂るの墓』のような重いテーマの作品は、年齢や発達段階に応じて“伝え方”を工夫することが大切です。
ここでは、家庭で子どもと一緒に観る際のポイントを年齢別に紹介します。
年齢別の視聴ポイント
小学校低学年(〜8歳)
- 全編ではなく、親が選んだシーンだけを短く見せるのがおすすめです。
- 観たあとは「怖くなかった?」「どう思った?」など、安心させる声かけを心がけましょう。
小学校中〜高学年(9〜12歳)
- 本編を通して観られる年齢ですが、視聴後の反応がその子の“感受性”を映す鏡になることもあります。
- 涙を流したり、言葉にできなくても静かに悲しそうにしていたら、それだけでも十分。心のどこかに何かが届いている証だと思います。「どうしてこんなことが起きたと思う?」「自分だったらどう感じる?」といった対話を通して、考えるきっかけを与えましょう。
中学生以上
- この年代になると、自分の意思で戦争や社会について考える力が育ってきます。
- 親が見せるというより、本人が選んで観る・感じる経験として尊重するのがよいかもしれません。
- ただ、もし最後まで集中して一緒に観てくれたなら──それだけでも、きっと何かを受け取ってくれている証です。
Netflixなら、視聴途中で止めたり再開したりしやすく、家族の都合に合わせて柔軟に取り入れられるのも大きなメリットです。
戦争を“感じる”ことの意味
「この映画は“誰が悪い”を描かず、戦争の愚かさそのものを静かに伝えてくる」
“This isn’t just an animation, it’s a tragedy we must never repeat.”
「トトロのサツキと節子が同じ時代にいたら…」
映画は、教科書では伝わらない“感情”を届けてくれます。
だからこそ、私は子どもと一緒に観たいのです。
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結びに──あなたなら、どう伝えますか?
「ありがとう」と言える日常。
ごはんが食べられて、安心して眠れる夜。
それがどれだけ大切か。
たとえすべてを理解できなくても、“今少し”感じたことが、いつか“深く根を張る”かもしれない。
学校がいやだ、勉強したくない──そんな気持ちがあるのも、平和で恵まれた環境にいるからこそ湧いてくる感情です。
当たり前に思えることが、どれほど幸せなことかを、少しでも感じてほしい。
親子で同じ作品を観て、同じ気持ちを共有する──それこそが、今だからこそできる平和教育なのだと思います。
だから──
私はこの映画を、子どもと一緒に観たいと思います。
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